賃貸不動産の個人オーナーで、まだ確定申告を行ったことがない方
はじめに
不動産所得では、貸付けの規模に応じて税金計算の取扱いが異なります。
貸付けの規模が「事業的規模」に該当するか否かで取扱いが変わってきますが、この判定は具体的にどのように行うのでしょうか。
事業的規模の判定(実質基準)
不動産の貸付けが事業的規模と言えるかどうかは、まずは貸付けの実態に応じて実質的に判断を行います。
国税庁のタックスアンサー(よくある税の質問)「No.1373 事業としての不動産貸付けとそれ以外の不動産貸付けとの区分」では、以下のように記載されています。
不動産の貸付けが事業として行われているかどうかについては、原則として社会通念上事業と称するに至る程度の規模で行われているかどうかによって、実質的に判断します。
「社会通念上事業と称するに至る程度の規模」と記載がありますが、これは賃貸料の収入の状況、貸付資産の管理の状況、事業遂行上の企画性・継続性(積極的に事業に関与しているか否か)、および賃貸人の職歴・生活状況などを総合的に考慮して判断します。
ただし、この実質基準は判断基準としては曖昧であるため、特に反証がない限り次項の形式基準に該当する場合は事業的規模と判断するものとされています。
事業的規模の判定(形式基準)
「所得税基本通達26-9(建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定)」において以下のような記載があります。
(1) 貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であること。
(2) 独立家屋の貸付けについては、おおむね5棟以上であること。
これはいわゆる「5棟10室基準」と呼ばれるものです。
・独立した居住区画を10住戸以上貸している場合
・一軒家を5棟以上貸している場合
のいずれかに該当する場合は、特に反証がない限り事業的規模の貸付けと判断されます。
なお、(1)と(2)を両方所有している場合は、実務上の慣習として貸室2室を家屋1棟と換算して判定を行います。
したがって、例えば、
・アパートの貸室 6室
・一軒家 2棟
を所有している場合は、
6室÷2+2棟=5棟
となりますので事業的規模と判定されます。
ちなみに賃貸不動産を共有している場合は、共有持分を乗じた後の数で判断するのか?という疑問が湧きますが、形式基準の判定上は持分を乗ずる必要はない点に注意が必要です。
また、5棟10室基準はあくまで一つの形式基準であって、この基準に該当しないから即、事業的規模でないという判断がされるわけではありません。
前記の実質基準に基づく判断で事業的規模と判定できる場合もあることから、実務上は個別状況に応じた判断が必要となります。
事業的規模か否かによって、どのような税金計算上の違いが生じるのかは、
「不動産所得 ― 事業的規模・業務的規模の所得計算の違い」で解説を行います。
この投稿には、簡潔な説明を行う都合上、厳密性を欠く部分があります。
また、掲載している情報は投稿日時点の法令等に基づくものであり、
最新の税法や個別の状況によっては異なる取り扱いとなる場合があります。
個別具体的な税務判断や申告手続きを行う際は、必ず税理士等の専門家にご相談いただき、
専門家のアドバイスに基づいたご判断をお願いいたします。