賃貸不動産の個人オーナーで、まだ確定申告を行ったことがない方
はじめに
不動産所得の計算は、「総収入金額 - 必要経費 = 不動産所得の金額」で行われます。
この式の総収入金額には、家賃、地代、更新料などが含まれますが、ある年分の確定申告を行う際に、その年の収入金額に含めるか否かの判断はどのように行うのでしょうか。
収入計上時期(原則)
不動産の貸付け対価の収入計上時期は、原則として以下のとおりです。
(1) 契約や慣習などにより支払日が定められている場合は、その定められた支払日
(2) 支払日が定められていない場合は、実際に支払を受けた日
不動産賃貸借契約では、前月末までに翌月分を前払いすると規定されているものが多いかと思います。
この場合、支払日が前月末までと定められているため原則的な取扱いは(1)となり、契約書に定められた支払日に収入を計上することとなります。
例えば、2026年1月分の賃料を2025年12月末までに支払うこととされている場合は、2026年1月分の賃料は2025年の不動産所得の収入金額に含めて計算します。
仮に12月末までに入金が無かった時も、契約書で定められた本来の支払期限に収入計上を行います。
収入計上時期(例外)
上記のとおり原則的な取扱いでは、前受賃料も不動産所得の計算上、収入計上する必要があります。
経理や会計に馴染みのある方であれば、収益・費用の期間対応の観点から違和感を感じられるかもしれません。
いわゆる発生主義の処理を行うことは認められていないのでしょうか。
税務当局内部の取扱いを定めた法令解釈通達「不動産等の賃貸料にかかる不動産所得の収入金額 の計上時期について」において、事業的規模の貸付け(いわゆる5棟10室基準など)で、以下の条件をすべて満たすときは発生主義の計上をすることができるとされています。
(1) 不動産所得を生ずべき業務にかかる取引について、その者が帳簿書類を備えて継続的に記帳し、その記帳に基づいて不動産所得の金額を計算していること。
(2) その者の不動産等の賃貸料にかかる収入金額の全部について、継続的にその年中の貸付期間に対応する部分の金額をその年分の総収入金額に算入する方法により所得金額を計算しており、かつ、帳簿上当該賃貸料にかかる前受収益および未収収益の経理が行なわれていること
(3) その者の1年をこえる期間にかかる賃貸料収入については、その前受収益または未収収益についての明細書を確定申告書に添付していること。
したがって、継続処理が前提となりますが、複式簿記で記帳を行い、貸借対照表に前受賃料の計上ができるのであれば、発生主義に基づく所得計算を行うことができます。
なお、事業的規模でない場合でも、上記引用(1)と(2)の要件を満たせば、1年以内の期間にかかる不動産等の賃貸料の収入金額については、発生主義を適用できるとされています。
この投稿には、簡潔な説明を行う都合上、厳密性を欠く部分があります。
また、掲載している情報は投稿日時点の法令等に基づくものであり、
最新の税法や個別の状況によっては異なる取り扱いとなる場合があります。
個別具体的な税務判断や申告手続きを行う際は、必ず税理士等の専門家にご相談いただき、
専門家のアドバイスに基づいたご判断をお願いいたします。